3-8 練習の定量化の方法~モジュール化~

 練習の量と質の記事で、練習のモジュール化について少しだけ触れました。
 これについて、練習をどのようにしてモジュール化し定量的な練習にするのか解説します。
 因みに、モジュール化という言葉は製造業の方に使われているものから、考え方としてかなり似ていると感じたので持ってきています。
 そこでも複数の意味が有りますが、「規格化された組立ユニット」が一番ニュアンスは近いです。

(1)基本的なモジュール化について
 モジュール化をするに当たって、まず何のトリックを練習するかを決めます。そして、以下の点について自分の持久力やスキルレベルを考えながら決めていきます。

(ア)連続何回行うか決め、これを1セットとする
(イ)上記のセットを何セット行うかを決定する。
(ウ)回数のカウント方式を決定する

 これだけです。結構簡単ですね。
 但し、今まで取り組んだことが無い人はイメージが湧きにくいかもしれないので、実際に例を挙げてみましょう。
 まず、練習するトリックの決定ですがこれはストロングのclipperとしましょう。
連続何回行うかという点については、20回連続としこれを1セットとします。これが最小のモジュールとなります。
 このモジュールを5セット行う事とします。これでclipperをトータルで100コンタクト行う練習となります。
 回数のカウント方式については、今回はドロップした場合ノーカウントとし、成功した場合だけカウントします。
 これで、モジュール化により定量化した「ストロングclipper20回×5セット、ドロップはノーカウント」というメニューが完成しました。
 これを行うメリットは、原理的に全てのトリックに応用できること、回数を調整するのが容易である事、かかる時間が事前に予測できる事、どれだけ練習したかが計測しやすいので成長度合いとの相関を把握しやすいこと、何をどれだけ練習をするかが具体的になる事などが挙げられます。
 例えば、上記の連続回数を20回から30回に増やせば、合計150回になりますし、逆に10回に減らせば合計50回に減ります。
 あるいはセット数を調整する事でも、同様に回数を調整する事が出来ます。
 また、ドロップをカウントするかカウントしないかの選択で、難易度の調整をすることが可能です。
 このように一度モジュール化を考えておけば、練習の時にいちいちゼロから考える必要が無く、いくつかの変数をいじるだけで応用もきくので、練習内容を考える時間が大幅に短縮できます。

 この時に注意点がいくつかあります。まず、最小モジュールの中でドロップしても休憩をはさまず、規定回数(今回の場合は20回)に達するまで連続で練習を行う事。
 連続回数はどんなに多くとも40回以下とする事(20回が基本)。セットとセットの間の休憩時間を大雑把にでいいので決めておくことです。
 これらについては、その練習にかかる時間を予測しやすくするために必要です。また、連続回数を40回以下とするのは、無酸素運動(乳酸系運動)が30秒~40秒程度しか続かない為です。
 殆どのトリックが1コンタクト1秒程度なので、それで長くとも40回という事です。基本的には20回以下で構成して問題ありません。
 特に技術的な改善を目的とする場合は、総回数を増やすなら連続回数ではなくセット回数を増やしましょう。技術的な進展を望む場合、なるべく疲労の無い状態で行う方が効果的だからです。
 例えば20回×10セットならそれぞれのセットの最後の方(19回目や20回目)でも疲労はそこまでないでしょうが、これが40回×5セットにしたら、総回数は同じでも各セットの最後の方、特に35回目以降はかなり動きの質が落ちるはずです。
 ドロップをカウントに入れるかどうかはそのトリックの習熟度合によって決めます。
 基本的に成功確率が高く、ドロップせずに多数回行えるトリックはドロップはノーカウント、逆にドロップ確率が高いトリックはカウントします。
 ドロップ率の高いトリックをノーカウントにしてしまうと、せっかくモジュール化して定量化したのに、再試行回数が多くなりすぎて結局どれだけ練習したのかが量れないからです。
 もしドロップ率の高いトリックをノーカウントにする場合は、連続何回失敗したら1回と数えるかを事前に決めておきましょう。ちなみに私は大体3回連続失敗したら1回とカウントしています。

 因みに上記の例では同サイドで連続するトリックを選んだので、後は同内容をフリップサイドに適用すれば簡単に両サイドを練習するメニューが作れます。
 また、連続で行うと左右交互で行うトリックもあります。ここではpdx whirlを例にあげますが、これもpdx whirl×20左右交互を5セット(計100回:ストロング×50、フリップ×50)等のように簡単に組めます。
 この基礎的なモジュール化は、基本的に初メイク狙いや、初メイクできたけど単発でしかできないトリック、苦手なトリックに取り組むのに適しています。
 また、フリップを重点的に鍛えたい場合は、フリップのモジュール化した練習だけを組めばこれも簡単に作れます。

(2)応用的なモジュール化
 基礎的なモジュール化では同じトリックの連続を扱いましたが、違うトリックを組み合わせたモジュール化も当然考えられます。
 一番なじみの深いモジュール化対象はドリルでしょう。4~10トリックで循環することから、ドリル自体が最小のモジュール単位になるので、非常に簡単ですし相性が容良いです。
 例えばstepper(ripwalk>sidewalk>repeat)1回で4コンタクトこれを連続5回繰り返すことで20コンタクトを1セットとし、これを5セットで計100コンタクトのメニューが完成します。
 また、コンボでも循環する場合はモジュール化しやすいです。
 代表的なところではfiesta(paradon>barrage)で、2コンタクトで循環するのでこれを×5で10コンタクト、これを5セットボスサイドやれば同様にメニューが完成します。
 こちらはある程度技術が高く、また安定してないと練習として成り立たないので、やや難易度が上がります。
 目安としては、ドリルやコンボを構成するそれぞれのトリックの成功率が、単発で最低7~8割程度はないと厳しいでしょう。
 ただし、toe mirage>toe legover>repeatのように簡単なトリックでも構成できるので、初級者からでも取り組むことは可能です。
 むしろ、技の繋がりを意識することやフリップも練習する意識を培う事が出来るので、早い段階から練習に取り入れるよう推奨してもいいほどです。

(3)更に発展させる
 ここまでは単一のトリックや循環する組み合わせでモジュール化を考えましたが、更に発展させると実質的にはどのような組み合わせにも応用できます。
 例えばsick3でphoenix>blurry whirl>PS whirlという組み合わせを考えたとしましょう。
 これを最小のモジュールとし、×7で21コンタクト、これを5セットで105コンタクトの練習メニューが完成します。
 但しトリックが循環しないので、最小モジュール単発の練習にはなりますが、スタートを別サイドにするだけで、練習が左右均等に行うことは容易です。

(4)モジュール化のデメリット
 ここまでモジュール化のメリットに焦点を当てて説明してきましたが、当然デメリットもあります。
 その最たるものの1つが、「特定の状況でしか行えない技術を育ててしまう可能性が有る」というものです。
 例えば spinning clipper連続だけを練習して、連続10回程度安定して出来るようになったとします。
 その時点で、butterflyからspinning clipperを行ってみると殆ど成功しない、という事態が起こったりするという事です。
 一度技術を身に着けてから、別のつながりを練習すればいいじゃないかというのは確かにその通りなのですが、技術の安定性を極端に高めてしまうと、その技術を変化させ難くなってしまう事にもなるので注意が必要です。
 この事に関しては後に詳しく書きますが、技術を安定させることと技術を高めることは、ある程度相関はしますが同一ではありません。
 また、この時に悪い癖を固定化する危険性もあるので、ある程度そのトリック出来るようになったら色んなトリックにチャレンジした方が無難です。
上記の例で言えば、spinning clipperが連続で5回以上出来るようになったら、utterflyやduckingからの繋がりに変更する。
 あるいは、spinning butterfly連続やspinnning butterfly>gyro clipper>repeatのドリルを練習したりといった具合です。
 モジュール化して練習することは効率的にしやすいですし、定量化できるメリットも大きいのですが、それだけで技術は完成しません。
 ある程度モジュール化した練習を通して鍛えた技術を、様々な場面で使えるようにする練習が必要になります。
 また、フリーシュレッドやフリースタイルの中で使えるようにする練習も大切です。
 加えて、モジュール化を行って練習していると、自分できちんと意識しないと、ただ回数を機械的にこなすだけになってしまう恐れもあります。
 こうなると、どんなに回数を重ねようが大して成長しないので、必ず1回1回に集中し、絶えずフィードバックを行う意識を持たなければなりません。

 練習をモジュール化し定量的な内容にするというのは大切な視点ですが、それだけに偏らないように注意した方が良いでしょう。
 但し、自分の苦手なトリックやフリップサイドを鍛えるのには非常に有効な方法でもあるので、早い段階で身に着けた方が良いと思います。

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